認定試験対策ゼミナール -脈管専門医・血管診療技師・脳神経超音波検査士-
執筆者:尾崎俊也(医療法人清祥会川上内科臨床検査部部長)
監修:松尾 汎(医療法人松尾クリニック理事長・松尾血管超音波研究室室長)
今回の予想問題出題のねらい
2019年度の第14回血管診療技師認定試験の受付が開始されました。受験日は9月15日(日)です。皆さん、試験対策は進んでいますか? 今回は、皆さんの現状での知識レベルを確認することを目的として、血管疾患の病態、診断、手術適応や治療に関して幅広く出題します。
受験者へのアドバイス
血管診療技師(CVT)は、十分な経験から得られた技術をもって、正確な検査データを導き出すのが業務の主体です。そのため、血管に関する解剖・生理や検査技術の知識は必須とされ、十分に勉強されていることと思います。しかし、CVT試験ではあらゆる血管疾患の病態、診断、手術適応や治療に関しても幅広く出題されます。今回は、これらに関する知識レベルを確認し、今後の試験対策の参考にしていただけるように企画しました。
※最後の忠告です。「問題はゆっくり正確に読みましょう!」
■予想問題
■問題1 脳血管疾患の病態や手術適応について、正しいものを1つ選びなさい
① 一過性脳虚血発作は、「局在性の脳、脊髄、網膜の虚血が原因で生じる一過性の神経機能障害で、急性脳梗塞のないもの」と定義され、症状の持続時間には影響されなくなった。
② 脳梗塞の3大病型は、アテローム血栓性脳梗塞、ラクナ梗塞、心原性脳塞栓症で、アテローム血栓性脳梗塞とラクナ梗塞で80%前後を占める。
③ ラクナ梗塞は、脳主幹動脈から分岐する穿通枝の閉塞から脳梗塞を呈するが、動脈硬化が主体であり、特に脂質異常症が危険因子で、画像上は5mm未満の小梗塞になる。
④ 超急性期の脳梗塞の治療は、発症4.5時間以内であれば禁忌事項に抵触しない限りアルテプラーゼによる血栓溶解療法が適応されるが、再開通が得られなかった症例や、適応外症例については発症後24時間以内であれば血管内治療による血栓除去術が適応となる。
⑤ くも膜下出血は、くも膜と軟膜の間のくも膜腔に出血する病態で、脳動脈瘤の破裂による発症が最も多い。典型的な症状は「今までに経験したことのない激しい頭痛」で、発症後4~14日の間に脳動脈攣縮を起こす可能性が高く厳重な管理を必要とする。
解答を見る
解答1 ⑤
① 2009年に、AHA/ASA Stroke Councilにより設問①のように定義されたが、拡散強調画像の出現により、短時間で脳梗塞巣が描出されるようになり、以前はTIAと診断された症例の中に脳梗塞と診断される症例が出現するようになった。現在では「24時間以内に消失する、脳または網膜の虚血による一過性の局所神経症状で、画像上の梗塞巣の有無は問わない」とされている。
② 脳梗塞の3大病型は設問②の通りであるが、各疾患は20%前後のほぼ同率で認める。
③ ラクナ梗塞の重要な危険因子は高血圧で、画像上は1.5cm未満の小梗塞となる。
④ 急性期血管内治療の適応は、発症後8時間以内とされている。
認定試験対策ゼミナール -脈管専門医・血管診療技師・脳神経超音波検査士-
2006年、血管外科学会、脈管学会、静脈学会の3学会構成(2014年からは日本動脈硬化学会も構成学会の一つとなる)による血管診療技師認定機構が発足し、日本におけるCVT(血管診療技師)が誕生した。発足から着実にCVT者数は増え、日本にその地位は根付き、活動の幅をどんどん広めてきた。そして『Vascular Lab』も、CVT誕生からの10年間、その歩みとともにCVTの方々に愛され続けてきた雑誌である。『Vascular Lab』は、いまはその役目をひとまず終えたが、その本誌の中で連載されてきた「認定試験対策ゼミナール」は、いまも変わらず必要としている人が多くおられ、復活を願う声が多く寄せられた。これを受け、同連載を、新しいウェブマガジンで提供していくこととした。
本連載は、血管診療の第一線で活躍する医師や、CVTを取得し全国で活躍する技師の方々に、これからCVTや専門医を取得するために勉強をされる皆さまのために、試験の傾向や対策、臨床で必要とされる知識などを問題形式でご執筆いただいている。
これからの未来、多くのCVT・専門医が全国で活躍し、脈管疾患検査が発展していくことを願う。
324円/1記事(税込)
毎月10日発行(著者および編集の都合により発行が前後することがございます)
筆者プロフィール
土田博光:誠潤会水戸病院/小谷敦志:近畿大学医学部奈良病院/尾崎俊也:医療法人清祥会川上内科/駒井宏好:関西医科大学総合医療センター/浅岡伸光:八尾市立病院/春田直樹:たかの橋中央病院
土田博光/小谷敦志/尾崎俊也/駒井宏好/浅岡伸光/春田直樹ほか