認定試験対策ゼミナール -脈管専門医・血管診療技師・脳神経超音波検査士-
執筆者:小谷敦志(近畿大学医学部奈良病院 臨床検査部)
監修:松尾 汎(医療法人松尾クリニック理事長・松尾血管超音波研究室室長)
今回の予想問題出題のねらい
今回は、リンパ浮腫(lymphoedema)について出題します。近年ではがんが増加しており、婦人科腫瘍後の合併症としてリンパ性の浮腫が注目されています。2008年度の診療報酬改定によって、がん治療のリンパ節郭清に伴う続発性リンパ浮腫に対して、弾性着衣や弾性包帯を用いた圧迫療法が保険適用になったことに加え、退院指導管理加算が算定されることになり、それ以降、リンパ浮腫に対する関心が高まっています。
CVTを取得するのであれば、リンパ浮腫に対する治療の知識も覚えておきましょう。
受験者へのアドバイス
リンパ浮腫は、「リンパの輸送障害に組織間質内の細胞性タンパク処理能力不全が加わり、高タンパク性の組織間液が貯留し生じる臓器や組織の腫脹」と定義されています1)。リンパ浮腫は静脈疾患との鑑別において大切です。
一方、浮腫とはリンパ管や静脈などの還流不全などによる組織間質内に組織液が貯留した状態をいいます。また、肉眼的に腫れている(腫脹)原因は、浮腫のほかに炎症や血腫、筋組織の肥厚、腫瘍などが含まれます。
■予想問題
■問題1 下肢リンパ浮腫について正しいのはどれか。1つ選べ。
解答1 ③
①発症の原因は、一次性と二次性に分類される。一次性は発症時期から先天性、早発性、遅発性に分けられる。二次性は後天的な原因であり、悪性疾患治療後の放射線治療により発症するものや、悪性腫瘍の進行によるもの、外傷や感染などがある。近年のがんの増加に伴い二次性が多い。
②一次性リンパ浮腫は両側性にみられ、二次性リンパ浮腫は患側の片側性にみられることが多い。
③患肢の色調変化のない無痛性腫脹が主体であり、時に皮膚の緊満感、重圧感を認め、蜂窩識炎を合併することが多い。
④皮下圧迫痕(pitting edema)は、進行度によって異なる。進行度は0期からⅢ期に分けられる。0期は、潜在性でありリンパ浮腫が顕在化してない時期である。Ⅰ期では皮下圧迫痕を認める。Ⅱ期は早期と晩期に分けられ、早期では皮下圧迫痕が残るが、晩期では皮下圧迫痕は残らない。Ⅲ期は象皮症などを呈している状態であり、皮下圧迫痕は残らない。
⑤Stemmer signとは、第2趾、第3趾の間の皮膚がつまみ上げられるかを判定するものであり、つまみ上げられない場合に陽性と判定する。リンパ浮腫だけではなく、浮腫の特徴となる患肢の参考所見である。
認定試験対策ゼミナール -脈管専門医・血管診療技師・脳神経超音波検査士-
2006年、血管外科学会、脈管学会、静脈学会の3学会構成(2014年からは日本動脈硬化学会も構成学会の一つとなる)による血管診療技師認定機構が発足し、日本におけるCVT(血管診療技師)が誕生した。発足から着実にCVT者数は増え、日本にその地位は根付き、活動の幅をどんどん広めてきた。そして『Vascular Lab』も、CVT誕生からの10年間、その歩みとともにCVTの方々に愛され続けてきた雑誌である。『Vascular Lab』は、いまはその役目をひとまず終えたが、その本誌の中で連載されてきた「認定試験対策ゼミナール」は、いまも変わらず必要としている人が多くおられ、復活を願う声が多く寄せられた。これを受け、同連載を、新しいウェブマガジンで提供していくこととした。
本連載は、血管診療の第一線で活躍する医師や、CVTを取得し全国で活躍する技師の方々に、これからCVTや専門医を取得するために勉強をされる皆さまのために、試験の傾向や対策、臨床で必要とされる知識などを問題形式でご執筆いただいている。
これからの未来、多くのCVT・専門医が全国で活躍し、脈管疾患検査が発展していくことを願う。
324円/1記事(税込)
毎月10日発行(著者および編集の都合により発行が前後することがございます)
筆者プロフィール
土田博光:誠潤会水戸病院/小谷敦志:近畿大学医学部奈良病院/尾崎俊也:医療法人清祥会川上内科/駒井宏好:関西医科大学総合医療センター/浅岡伸光:八尾市立病院/春田直樹:たかの橋中央病院
土田博光/小谷敦志/尾崎俊也/駒井宏好/浅岡伸光/春田直樹ほか