認定試験対策ゼミナール -脈管専門医・血管診療技師・脳神経超音波検査士-
執筆者:土田博光(誠潤会水戸病院 院長)
監修:松尾 汎(医療法人松尾クリニック理事長・松尾血管超音波研究室室長)
今回の予想問題出題のねらい
今回は末梢動脈疾患(peripheral artery disease:PAD)の外科手術を取り上げた。外科手術も血管内治療(endovascular treatment:EVT)と同様、侵襲的治療であり、安易に行うべきではないが、重症虚血肢には血行再建が第一選択となり、保存的治療が無効の場合も選択される治療で、外科手術はPADの血行改善に最も効果的な方法である。もちろん外科医が行う治療であるが、臨床検査技師や診療放射線技師による正確な評価のもと、看護師や臨床工学技士の介助を受けながら行わなければならない。また術後のADL回復には理学療法士の協力が必要であり、外科手術の成功にはチームの一員である各職種のCVTが、外科手術の適応や基本的知識を知っていることが必要である。
受験者へのアドバイス
出題者は手術室勤務以外の受験生もいることは当然理解しており、細かい手術手技が出題されることなない。とは言え、手術の知識は、テキストだけでなく現場で得られる知識も多い。日常、手術室にかかわらない受験者は、できれば手術を見学する機会を得るか、すくなくとも検討会等で、手術に関する質疑を考えながら聞く機会を持つと、理解が深まることは間違いない。
■予想問題
■問題1 血行再建時、血管内治療でなく外科手術が第一選択とされるものはどれか。
解答1 ②
腸骨動脈、浅大腿動脈ともTASC分類A、Bは血管内治療(EVT)、C、Dは外科治療(バイパス術)が優先されるとしている。しかし、腸骨動脈病変はEVTの開存率が高く、TASC CでもEVT施行が増えている。浅大腿動脈も、血管内ステントグラフトの導入で、長い病変(TASC C、D)でもEVTが行われる頻度が増えつつある。深大腿動脈は、起始部を除き通常血行再建されることはない。足底動脈弓の外科的血行再建は困難である。総大腿動脈の単独閉塞は血栓内膜摘除術のよい適応であり、ステント禁忌部位であることからも、外科手術が第一選択となる1)。
本問題では、閉塞長は問わず血管の部位のみで問われているので、正解は総大腿動脈である。ちなみに膝窩動脈もステント禁忌部位であるがバルーン拡張のみであればEVT適応である。
認定試験対策ゼミナール -脈管専門医・血管診療技師・脳神経超音波検査士-
2006年、血管外科学会、脈管学会、静脈学会の3学会構成(2014年からは日本動脈硬化学会も構成学会の一つとなる)による血管診療技師認定機構が発足し、日本におけるCVT(血管診療技師)が誕生した。発足から着実にCVT者数は増え、日本にその地位は根付き、活動の幅をどんどん広めてきた。そして『Vascular Lab』も、CVT誕生からの10年間、その歩みとともにCVTの方々に愛され続けてきた雑誌である。『Vascular Lab』は、いまはその役目をひとまず終えたが、その本誌の中で連載されてきた「認定試験対策ゼミナール」は、いまも変わらず必要としている人が多くおられ、復活を願う声が多く寄せられた。これを受け、同連載を、新しいウェブマガジンで提供していくこととした。
本連載は、血管診療の第一線で活躍する医師や、CVTを取得し全国で活躍する技師の方々に、これからCVTや専門医を取得するために勉強をされる皆さまのために、試験の傾向や対策、臨床で必要とされる知識などを問題形式でご執筆いただいている。
これからの未来、多くのCVT・専門医が全国で活躍し、脈管疾患検査が発展していくことを願う。
324円/1記事(税込)
毎月10日発行(著者および編集の都合により発行が前後することがございます)
筆者プロフィール
土田博光:誠潤会水戸病院/小谷敦志:近畿大学医学部奈良病院/尾崎俊也:医療法人清祥会川上内科/駒井宏好:関西医科大学総合医療センター/浅岡伸光:八尾市立病院/春田直樹:たかの橋中央病院
土田博光/小谷敦志/尾崎俊也/駒井宏好/浅岡伸光/春田直樹ほか