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第3回 「ギャップ分析」で5つのギャップを解消し、若手スタッフの定着を目指そう!

悩めるスタッフ・看護管理者のための “かんたん”フレームワーク思考 入門編

第3回 「ギャップ分析」で5つのギャップを解消し、若手スタッフの定着を目指そう!

 当たり前のことですが、後輩や若手スタッフを育てる前に、まずはしっかりと職場に定着してもらわなければなりません。若手スタッフが「自分は職場の一員だ」と自覚し、仕事や職場の人間関係に悩むことなく、「ここでがんばろう」と思える状態にならなければ、あなたの育てようという努力はなかなか実を結びませんし、その努力が無駄に終わってしまうことだってあります。まずは新しく入ってきたスタッフを育てようとする前に、自分自身を見直して、スタッフが職場でがんばれる環境をつくることに心を砕いてみましょう。

 スタッフに定着したもらうためには、若手スタッフがリーダーやマネジャー、あるいは職場自体に感じるギャップを解消する必要があります。さまざまなギャップを解消できなければ、いつまでも若手スタッフに対して“お客さま”のように必要以上の丁寧さをもって接しなければなりませんし、辞めてしまわないかと不安に思いながら、腫れものに触るように接してしまいかねません。

 リーダー・マネジャーが「普通のこと」「当然のこと」と思っていても、若手スタッフには違和感があったり、理解が難しかったり、さらにはそのことを言い表すのにかなりの努力や勇気がいったりするかもしれません。そんな若手スタッフの姿を見て、「イマドキの……」と感じてしまう気持ちはよくわりますが、それではいつまでも相手との考え方や感じ方のギャップを解消できず、お互いに違和感や遠慮を感じたままの状態が続くだけです。そのような違和感や遠慮を取りのぞくときに役立つのが、「理想-現実(現状)」の図式で「理想」と「現実」の違いを理解する「ギャップ分析」。今回は「ギャップ分析」に基づいて、若手スタッフの悩みごとについて考えてみましょう。


“「理想-現実(現状)」の図式で「理想」と「現実」の違いを理解する「ギャップ分析」”


〈スタッフの悩みごと〉

 私の職場にはとてもすてきな人が揃っていて、本当に恵まれているなと日ごろから感謝しているのですが、それでもなかなかなじめないと感じることがあります。すごく丁寧に教えていただけるし、うまくいかなかったときでも、ちゃんとフォローもしてもらえるのですが、どこか子ども扱いされているというか、「一人前ではない」と言われているような気がします。休憩のときなども声をかけてもらえますが、気を遣わせるだけの存在になっているのではないかと、逆に不安になることがあります。先輩方が話しているときにも、私が口を出していいものかと思ってしまい、なかなか話に入っていけません。

 私がこう感じてしまうのは、おかしいのでしょうか。それとも、働きはじめて1年くらいで職場になじむなんていうのは到底できないもので、もう少し時間が経てばなじめないという感覚はなくなるのでしょうか?(20歳代・勤続1年)

〈まずはスタッフの立場を考えてみよう〉

 まったく新しい環境に入っていくのは誰でも緊張しますし、いろいろと気を遣い、なじむまでには時間もかかります。知識や技術があり、それなりの経験を重ねてきた人であっても新たな環境になじむのが難しいと感じるのですから、スキルに自信がなく、仕事や職場の経験も浅い若手スタッフならなおのことでしょう。

 また、技術の進歩、顧客の要望の高度化・多様化、コンプライアンス上の問題などから、業務や組織が以前よりも複雑になっているため、新しく入ってくる若手スタッフはマネジャーやリーダーが想像するよりもずっと仕事や職場になじみにくいと感じているはずです。

 〈スタッフの悩み〉を一読すると、この若手スタッフは職場の仲間から大切にされており、みんなに感謝の気持ちももっていて、とてもよい環境にあるようです。しかし、若手スタッフは大切にされていることで、逆に「気を遣わせるだけの存在になっているのではないか」と感じてしまっています。手厚い指導やフォローがかえって若手スタッフに「一人前ではないと言われている」と意識させる結果となり、このような環境に甘えていてよいのかといった迷いも生じさせているように思えます。まじめでやる気のある若手スタッフだからこそ、このように感じてしまうのでしょう。


“業務や組織は以前よりも複雑になっているため、若手スタッフはマネジャーやリーダーが想像するよりもずっと仕事や職場に馴染むのが難しいと感じている”



悩めるスタッフ・看護管理者のための “かんたん”フレームワーク思考 入門編

 「言われたとおりにしているはずなのに、どうして怒られるの!?」(スタッフの声)「わかっていると思っていたのに、どうしてうまく伝わらないの!?」(主任・師長の声)……病院の理念や看護部の方針のもとで、経営意識をもってコスト管理、人材育成、患者対応、時間管理を行うように求められる師長、主任、スタッフの悩みには深くて重いものがあります.そのようななか、「自分で考えて、動けるようになって」という言葉は、誰もがよく聞く言葉かもしれません。
 では、日常業務のなかでどのように「考えて動く」とベストなパフォーマンスを発揮することができるのでしょうか? そのためには、状況がどうなっているか、相手がどのように考えているのかを知り、自分なりに整理したうえで言動に移していく必要があります。そして自分の考えや話を整理するためには、フレームワーク(考え方の枠組み)を生かした考え方、つまり「フレームワーク思考」を自由自在に使えるようになることが大切なのではないでしょうか。
 このコンテンツでは、大好評を博している『マネジメントの基本概念が図解でわかる 速習!看護管理者のためのフレームワーク思考53』(「ナーシングビジネス」2015年秋季増刊)の著者、組織人事コンサルタントの川口雅裕先生がフレームワークを使った考え方や話し方を楽しくわかりやすく解説します。「フレームワーク思考」を身につければ、コミュニケーションやマネジメントがさらに楽しくなります。よくあるナースの悩み事も「フレームワーク思考」を使ってサラっと解決しましょう!

324円/1記事(税込) 毎月10日発行

筆者プロフィール

川口 雅裕

一般社団法人「人と組織の活性化研究会」世話人、NPO法人「老いの工学研究所」研究員

川口 雅裕

京都大学教育学部卒。1988年株式会社リクルートコスモスに入社。人事部門で組織人事・制度設計・労務管理・採用・研修などに携わった後、経営企画室で広報・経営企画を担当。退社後、2003 年より組織人事のコンサルティング、講演、研修などの活動を行う。一般社団法人「人と組織の活性化研究会」世話人、NPO法人「老いの工学研究所」研究員。著書『だから社員が育たない』(労働調査会)、『顧客満足はなぜ実現しないのか』(JDC出版)など。

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