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第10回 「3C分析」を使って、KPI(重要業績評価指標)を的確に設定しよう!

悩めるスタッフ・看護管理者のための “かんたん”フレームワーク思考 入門編

第10回 「3C分析」を使って、KPI(重要業績評価指標)を的確に設定しよう!

〈はじめに〉

 目標というのはあくまで「結果」です。そして、「結果」には必ず「原因・要因」があります。したがって、どのような手段・対策を実行するのが望ましい「結果」を得るための「原因・要因」となるのかを考えることが大切です。この「目標達成のために最も重要な要因」を、KSF(key success factors)と呼び、それを数値化したものをKPI(key performance indicator:重要業績評価指標)といいます

 「3C分析」は、的確にKSFを導くためのフレームワークですCustomer(顧客)、Competitor(競合)、Company(自社)の3つの観点から、自分たちの置かれている環境について分析することで、組織の目標を達成するためのKSFとして、もっともふさわしいと考えられる手段・対策を設定しようとするものです。時代によって顧客や競合は変化していきますから、昔、効果的だった手段・対策(KSF)が今も同じように効果的であるとは限りません。また、それぞれの組織には、それぞれの特質、強み・弱みがありますから、他の病院でうまくいっている手段・対策が、自分たちの病院でもうまくいくとも限りません。目標を達成するための手段・対策を上手に決めるには、「3C分析」の観点から状況を的確に見極める必要があります。



“「3C分析」のフレームワーク使って状況を見極め、目標を達成するための手段・対策を決めよう!”


〈スタッフの悩みごと〉

 私が所属しているチームは、とても自由な雰囲気で、思ったことも口にしやすく、若手が提案する内容であっても受け入れてくれますし、積極的に取り組ませてくれると感じています。

 非常によいことだと思っていますが、冷静に振り返ってみると、言いっぱなしややりっぱなしになっている案件が多く、極端に言えば、何一つ実現していないようにも感じます。雰囲気はいいし、すぐに取り組むけれど、結局すべてが中途半端になっており、イメージしたような結果が出せていません。夢や目標は語るけれど、地道な行動は苦手。「それいいね、すぐにしよう!」となるけれど、いつの間にか行動しなくなり、それを誰もチェックしないので、気がつけばやりっぱなしになっている。そんな状態です。

 私もそうなのですが、飽きっぽい人が多いからなのでしょうか。現状が自由過ぎるとも思うのですが、もう少し厳しい雰囲気で仕事をするほうが中途半端にならなくてよいのではないでしょうか。(27歳・勤続5年)

〈まずはスタッフの立場を考えてみよう〉

 「言いっぱなし」や「やりっぱなし」でいつの間にか夢や目標の実現に向けた行動が忘れられてしまうといった状況は、多くの企業の現場でも常に起こっている問題です。せっかくのアイデアや行動も、ある程度の成否がはっきりするまで継続してみなければ、望ましい結果は得られません。このスタッフの問題意識も、そのようなところにあります。

 もっとも、「目標を掲げただけで、計画も担当者・責任者も決めずにいるような状況」や「効果がないと皆が感じているのに、これまでやってきたからという理由だけでやめられず、延々と続けているような状況」よりは、はるかにましとはいえるでしょう。

 このスタッフは、皆が提案したことが中途半端に終わってしまう原因を、「飽きっぽい人が多いから」ではないかと考えているようですが、現実にはうまくいくかどうかわからないことを愚直に続けられる人はとても少ないものです。また、自由な雰囲気ではなく、細かく厳しいチェックが行われるようなマネジメントのもとでなら確かに継続はされるかもしれませんが、それはそれで、厳しいチェックやマイナス評価を恐れて、自由な発言やアイデアが出なくなってくるかもしれません。

 そのため、「飽きっぽい」といった性質や「自由過ぎる」といった雰囲気を問題にすると、解決が難しくなります。それらは人や組織がそれぞれもっている根本的かつ固有のものであり、変えるのが難しいからです。大切なのは、飽きっぽい人が多くても、自由過ぎる雰囲気であっても、しっかり行動を継続できる仕組みをつくることです。そして、それが組織運営というものだと思います。



“皆がしっかり行動を継続できる仕組みをつくることが組織運営というもの!”


悩めるスタッフ・看護管理者のための “かんたん”フレームワーク思考 入門編

 「言われたとおりにしているはずなのに、どうして怒られるの!?」(スタッフの声)「わかっていると思っていたのに、どうしてうまく伝わらないの!?」(主任・師長の声)……病院の理念や看護部の方針のもとで、経営意識をもってコスト管理、人材育成、患者対応、時間管理を行うように求められる師長、主任、スタッフの悩みには深くて重いものがあります.そのようななか、「自分で考えて、動けるようになって」という言葉は、誰もがよく聞く言葉かもしれません。
 では、日常業務のなかでどのように「考えて動く」とベストなパフォーマンスを発揮することができるのでしょうか? そのためには、状況がどうなっているか、相手がどのように考えているのかを知り、自分なりに整理したうえで言動に移していく必要があります。そして自分の考えや話を整理するためには、フレームワーク(考え方の枠組み)を生かした考え方、つまり「フレームワーク思考」を自由自在に使えるようになることが大切なのではないでしょうか。
 このコンテンツでは、大好評を博している『マネジメントの基本概念が図解でわかる 速習!看護管理者のためのフレームワーク思考53』(「ナーシングビジネス」2015年秋季増刊)の著者、組織人事コンサルタントの川口雅裕先生がフレームワークを使った考え方や話し方を楽しくわかりやすく解説します。「フレームワーク思考」を身につければ、コミュニケーションやマネジメントがさらに楽しくなります。よくあるナースの悩み事も「フレームワーク思考」を使ってサラっと解決しましょう!

324円/1記事(税込) 毎月10日発行

筆者プロフィール

川口 雅裕

一般社団法人「人と組織の活性化研究会」世話人、NPO法人「老いの工学研究所」研究員

川口 雅裕

京都大学教育学部卒。1988年株式会社リクルートコスモスに入社。人事部門で組織人事・制度設計・労務管理・採用・研修などに携わった後、経営企画室で広報・経営企画を担当。退社後、2003 年より組織人事のコンサルティング、講演、研修などの活動を行う。一般社団法人「人と組織の活性化研究会」世話人、NPO法人「老いの工学研究所」研究員。著書『だから社員が育たない』(労働調査会)、『顧客満足はなぜ実現しないのか』(JDC出版)など。

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