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第7回 「ヒューマンエラーの5M」で、ミスやトラブルの再発を防止しよう!

悩めるスタッフ・看護管理者のための “かんたん”フレームワーク思考 入門編

第7回 「ヒューマンエラーの5M」で、ミスやトラブルの再発を防止しよう!

〈はじめに〉

 どんな仕事であっても、人が原因となるミスやトラブル(ヒューマンエラー)はつきものですが、特に医療や看護では、それらが人の身体や健康・命にかかわりかねませんから、より注意が必要ですし、ミスやトラブルが起こらないように継続的に改善する努力が欠かせません。

 現代はインターネットの普及などで消費者(利用者)がさまざまな情報に詳しくなり、評判やうわさが広まるのも早くなっていますから、ちょっとしたミスやトラブルが病院のブランドを傷つけてしまうかもしれないという視点をもつことも大切です。

 とはいえ、いくらちゃんとしたマニュアルや仕組み・ルールなどを作ったとしても、過去に例がないようなケースは必ず発生しますし、似たようなケースではあっても「まったく同じケース」でなければ、多かれ少なかれ対応方法を変更する必要もあるでしょう。また、対応する人の技術レベルや知識量なども異なりますから、全員が同じようにマニュアルやルールに書いてあるとおりに業務を遂行するのは容易ではありません。

 そもそも、人間が何かを実行する以上、間違う可能性を完全になくすことはできませんミスやトラブルは必ず起こるものと考え、起こったとき、あるいは起こりそうになったときに、誰かを叱責して終わりにするのではなく、冷静かつ論理的にその原因を特定し、再発防止に努めることが重要になります。

 ヒューマンエラーの原因は、①Man(人)、②Machine(機械)、③Media(メディア)、④Management(マネジメント)、⑤Mission(ミッション)という5つのMに分類できます。今回は、「ヒューマンエラーの5M」の視点からミスやトラブルの再発を防ぐためにはどうすればよいのかについて、解説します。


“人間が何かをする以上、ミスは必ず起こるもの。”


〈スタッフの悩みごと〉

  つい先日、私から後輩への伝達漏れがあり、大きなトラブルにつながりかねないミスがありました。伝わっているもの、当然わかっているものと思い込んでいた私のほうが悪いのですが、上司からきつい叱責を受けました。

 今回の件は私のせいなので仕方がないのですが、問題は似たようなケースがこれまでも何度か起こっていて、そのたびに「次回から気を付けよう」という掛け声で終わっていることです。もちろん、マニュアルもルールもあるのですが、いつか本当に大きなミスが起こるのではないかと感じています。どのような改善策を講じればよいでしょうか? (28歳・勤続5年)

〈まずはスタッフの立場を考えてみよう〉

 このスタッフには、ちょっとした行き違いが大きなトラブルにつながりかねないという認識があり、そのうえで日々の業務に忙殺されるだけでなく、しっかりリスクをみようとしています。看護の仕事にやりがいを感じて、前向きに取り組もうとする姿勢は、これからも大事にしていただきたいと思います。

 そのうえで、やはり問題だと思うのは、「きつい叱責を受けました」「次回から気を付けようという掛け声で終わっている」という部分です。もちろん、能力的にも状況的にもできるはずのことをしなかったケースでは、本人を叱ることも当然かもしれませんし、「次回から気を付ける」という意識を共有するのも大切でしょう。しかし、それで再発が防止できるかどうかは疑問が残ると言わざるを得ません。人間には必ずうっかりミスがあるので、単に注意を喚起するだけでは再発防止はかなわないからです。

 組織として、「なぜそのようなことが起こったのか」という原因をしっかり究明し、その原因をなくすような対策を講じ、共有という、論理的で冷静な対応が欠かせません。それによって初めて、このスタッフが感じている「いつか本当に大きなミスが起こるのではないか」という不安が解消されるはずです。


“「なぜそのようなことが起こったのか」という原因をしっかり究明し、その原因をなくすような対策を講じ、共有すること。”


悩めるスタッフ・看護管理者のための “かんたん”フレームワーク思考 入門編

 「言われたとおりにしているはずなのに、どうして怒られるの!?」(スタッフの声)「わかっていると思っていたのに、どうしてうまく伝わらないの!?」(主任・師長の声)……病院の理念や看護部の方針のもとで、経営意識をもってコスト管理、人材育成、患者対応、時間管理を行うように求められる師長、主任、スタッフの悩みには深くて重いものがあります.そのようななか、「自分で考えて、動けるようになって」という言葉は、誰もがよく聞く言葉かもしれません。
 では、日常業務のなかでどのように「考えて動く」とベストなパフォーマンスを発揮することができるのでしょうか? そのためには、状況がどうなっているか、相手がどのように考えているのかを知り、自分なりに整理したうえで言動に移していく必要があります。そして自分の考えや話を整理するためには、フレームワーク(考え方の枠組み)を生かした考え方、つまり「フレームワーク思考」を自由自在に使えるようになることが大切なのではないでしょうか。
 このコンテンツでは、大好評を博している『マネジメントの基本概念が図解でわかる 速習!看護管理者のためのフレームワーク思考53』(「ナーシングビジネス」2015年秋季増刊)の著者、組織人事コンサルタントの川口雅裕先生がフレームワークを使った考え方や話し方を楽しくわかりやすく解説します。「フレームワーク思考」を身につければ、コミュニケーションやマネジメントがさらに楽しくなります。よくあるナースの悩み事も「フレームワーク思考」を使ってサラっと解決しましょう!

324円/1記事(税込) 毎月10日発行

筆者プロフィール

川口 雅裕

一般社団法人「人と組織の活性化研究会」世話人、NPO法人「老いの工学研究所」研究員

川口 雅裕

京都大学教育学部卒。1988年株式会社リクルートコスモスに入社。人事部門で組織人事・制度設計・労務管理・採用・研修などに携わった後、経営企画室で広報・経営企画を担当。退社後、2003 年より組織人事のコンサルティング、講演、研修などの活動を行う。一般社団法人「人と組織の活性化研究会」世話人、NPO法人「老いの工学研究所」研究員。著書『だから社員が育たない』(労働調査会)、『顧客満足はなぜ実現しないのか』(JDC出版)など。

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