第4回 「自己決定理論」の3要素を意識して、スタッフのモチベーションを高めよう!
悩めるスタッフ・看護管理者のための “かんたん”フレームワーク思考 入門編

誰にでも、やる気が湧かない、なかなか調子が出てこないときがあります。また、部下や後輩に対しても、「もっとやる気を出して仕事に取り組んでほしい……」と、物足りない気持ちになることがあるはずです。
このモチベーションの問題は、古くから研究者たちの大きなテーマになっています。有名なものでは「内発的動機付け/外発的動機付け」「衛生理論」などがありますが、そう簡単に人間の内面が説明できるはずはありませんから、決定打や定説となっている理論はまだ存在しないといってよいと思います。ただ、心理学者のデシ(Deci)とライアン(Ryan)によって提唱された「自己決定理論」はわかりやすくかつ説得力のある理論なので、参考にできることが多いと思います。
「自己決定理論」のフレームを使って考えてみると、「私はなぜやる気が湧いてこないのか?」「なぜ部下のモチベーションが低いのだろう?」といった悩みを解決する糸口になるかもしれません。
“「私はなぜやる気が湧いてこないのか?」「なぜ部下のモチベーションが低いのだろう?」といった悩みを解決する「自己決定理論」。”
〈スタッフの悩みごと〉
私が働く病院では高齢者の患者さんの割合が年々、多くなっていくのですが、その対応に苦慮しています。私は高齢者の患者さんを嫌ったり遠ざけたりしているわけではなく、むしろ役に立ちたいという気持ちが強いのですが、なぜか怒られたり、クレームになったりすることが多く、思うように接することができません。
そこで先日、アドバイスをもらおうと思って上司と先輩に相談したのですが、「そもそもあなたは言葉遣いがなっていない」「知識が足りないから頼りないし、それが高齢者の方だけでなく、それ以外の患者さんみんなに伝わってしまっている」「そもそも仕事に対する取り組み姿勢が甘く、やる気が感じられない」「高齢者と上手に接するとかいう以前の問題」といった厳しい指摘をされてしまい、非常につらい思いをしました。このような状況を、どう考えればよいのでしょうか?(28歳・勤続5年)
〈まずはスタッフの立場を考えてみよう〉
どの病院でも高齢者の患者さんの割合は増えていますから、高齢者といかに上手に接するかは大切な課題でしょう。このスタッフも病院の一員としての自覚をもち、高齢者の患者さんに対する接し方を一生懸命に考えているのですから、この点では評価するべきです。そして、スタッフが接し方を一生懸命に考えていることと、スタッフの言葉遣い・知識・仕事への取り組み姿勢は、別に考えなければなりません。日ごろから、先輩・上司にはこのスタッフについていろいろと気になる点があり、我慢を重ねているからこのような対応になったのかもしれません。しかし、本来はこのスタッフが高齢者と上手に接するのが重要な課題と認識していること、自分の至らなさを含めて相談に来たことについてはまずはちゃんとほめましょう。その一方で、“ほめることとは別に”、スタッフの能力や姿勢には改善すべき点があると指摘・指導するべきではないでしょうか。そうでなければ、先輩・上司に聞く耳をもってもらえていないと思い、スタッフのモチベーションはいっそう低下してしまうでしょう。