第6回 「アイゼンハワーの法則」で“価値ある仕事”を見極めよう!
悩めるスタッフ・看護管理者のための “かんたん”フレームワーク思考 入門編
看護の現場を含めて多くの職場では、あれもこれもと忙しく、目の前の仕事に追われる日々が続く一方で、改善すべき業務や将来に向けた課題が放置されがちです。本来やりたいことややるべきことに手がつけられまま、気がつけば何ヵ月も何年も同じ状況が続いている……。このような職場では、それぞれが進歩・進化を実感できないために緩みが出たり、疲弊感や閉塞感が漂ってきたりします。
やりたいこと、やるべきことに時間を使ってしっかり取り組むには、今ある仕事を整理・分別したうえで、時間を短縮したり、担当者ややり方を変えたり、やめたりして時間を生み出さなければなりません。時代や環境が変われば、昔は価値があった仕事でもその価値や必要性が低下したりなくなったりすることがあるのは当然ですから、時代や環境に合わせて常に見直す必要があります。
アメリカの第34代大統領であったドワイト・D・アイゼンハワーは、仕事を見直す観点として「重要か、重要でないか」「緊急か、緊急でないか」の2軸を重ね、4領域をつくってそれぞれの象限に「必須」「価値」「錯覚」「無駄」と名づけました。これは「価値」のある仕事に時間を振り向けるためのフレームワークで、「アイゼンハワーの法則」といわれています。「アイゼンハワーの法則」を使って、「錯覚」や「無駄」に該当する仕事に要している時間やパワーを削り、“価値ある仕事”に集中しましょう。
“無駄な時間やパワーを削り、
「価値ある仕事」に集中できる「アイゼンハワーの法則」。”
〈スタッフの悩みごと〉
今の職場はとても忙しく、毎日、仕事が終わるとぐったり疲れてしまいます。最初のうちは充実感もありましたが、最近は「この状況がいつまで続くのだろう……(いつまでも続けられるのだろうか)?」という疑問が湧いてくるようになりました。また、私生活にかける時間も元気もなく、このままでは将来のことも少し不安です。もう少し余裕をもった仕事、私生活とのバランスをとれた仕事であれば……と思うのですが、看護師になった以上、こういう気持ちはわがままなのでしょうか? (27歳・勤続4年)
〈まずはスタッフの立場を考えてみよう〉
やりたかった看護の仕事につき、入ってみれば仕事がたくさんあって忙しく、あっという間に時間が過ぎてしまう。はたから見れば幸せなことじゃないかと思えますし、ある程度の期間なら、楽しさや充実を感じやすい状況でもあるでしょう。
ところがしばらくすると、新しい知識・技術を得たいという成長意欲、もっと患者さんのためになるような工夫をしたいという変革への欲求、仕事以外の生活も充実させたいという気持ちなどが、ほとんど満たされていないことに気づきます。「目の前の仕事だけに忙殺されている自分は幸福なのだろうか?」、また「この先、どうなっていくのだろうか?」という不安が芽生えます。看護師の退職にかかわる問題は、仕事への満たされない欲求や将来の不安にも大きな原因があると私は考えています。
このようなスタッフの満たされない欲求の解消や将来不安を解消するためにも、マネジャーが率先して、あるいは職場全体で、仕事の見直しを進めることが欠かせません。