第5回 「空-雨-傘」で、わりやすく説明しよう!
悩めるスタッフ・看護管理者のための “かんたん”フレームワーク思考 入門編
業務上のコミュニケーションでは、お互いの認識のギャップがないように正確を期す必要があります。日常の会話では、多少の認識のギャップがあっても構わないケースが多いわけですが、業務となれば患者さんに対する言動がバラバラになったり、引き継ぎ不足でミスを引き起こしたりし、それらが大きなクレームや取り返しのつかない事故になってしまう可能性があるからです。
このことは誰もがわかっていることでしょうが、実際には「合意したり、意見が一致したりしていたつもりが、後になって違っていることがわかった、間違って伝わっていた」といった事態が起こっています。十分に意思疎通を図ろうとしているのに、なかなかうまくいかないという組織は多いものです。
今回は「事実」「推測」「対策」の順にコミュニケーションを図る、「空-雨-傘」のフレームワークについてご紹介します。「空-雨-傘」のフレームワークを共通認識とすることで、チーム内のコミュニケーションを円滑にしましょう。
“十分に意思疎通を図ろうとしているのに、なかなかうまくいかないとい組織の悩みを解決してくれる「空-雨-傘」。”
〈スタッフの悩みごと〉
私はいつも、上司や先輩から「簡潔に話しなさい」「話がわかりにくい」「要するに、何が言いたいの?」と言われてしまいます。また、患者さんに対して十分に説明したつもりなのに、まったく伝わっていなかったり、勘違いされたりすることもあります。コミュニケーション能力にはそれなりに自信があったのですが、自信喪失ぎみです。簡潔に話し、上手に相手に伝えるためにはどうすればよいのでしょうか?(24歳・勤続2年)
〈まずはスタッフの立場を考えてみよう〉
文面からも、また「コミュニケーション能力にそれなりの自信がある」ということからも、上司や先輩、患者さんに対して積極的に働きかけ、伝えよう、わかってもらおうというスタッフの前向きな姿勢が伝わってきます。この点では、若いのに頼もしいと感じます。「話が長い」などと萎縮させるような指導を決してしないように心がけ、本人が自覚しているコミュニケーション能力の高さを伸ばすような方向で指導していきたいものです。このスタッフの問題は、業務上のコミュニケーションにおける基本の「型」を理解していないことにあります。日常会話のように相手の反応に応じてその場で思いついたことを話している場面では、「型」や「組み立て」は必要ありませんし、それでも構いません。しかし、業務上でそのようなコミュニケーションを行うと、相手と必要十分な情報を共有できませんし、認識のギャップも生じがちです。自分の頭のなかにある情報を「型」にはめて論理的に表現することで、相手にも同じように理解してもらえるという基本を理解すべきです。