第1回 頸動脈エコーの基礎:新しい標準的評価法
症例から学ぶ ビギナーのための血管超音波検査テクニック/エキスパートのための血管超音波検査テクニック
東北大学病院生理検査センター 診療技術部生理検査部門長
三木 俊
新しい標準的評価法について
はじめに
頸動脈は体表面から最も近く、明瞭に観察できる弾性血管であり、頸動脈をエコーで評価することは全身の動脈硬化の進行を推定する有用な検査法である。頸動脈エコーは弾力性・肥厚・石灰化・狭小化など機能的・器質的変化を両方把握できる唯一の検査であり、高血圧や糖尿病、脂質代謝異常、肥満、喫煙など動脈硬化の危険因子に起因する生活習慣病を有する症例、頸動脈病変を疑う症例、他部位の動脈治療時のリスク評価が必要な場合において重要な検査法である。
2016年12月に頸動脈エコー標準化が統一され『超音波による頸動脈病変の標準的評価法2016(案)』(文献1)(以下、『標準的評価法2016(案)』)がリリースされた。本稿では『標準的評価法2016(案)』を基準に頸動脈エコーの基本を述べる。
頸動脈エコーの推奨度とエビデンスレベル
『標準的評価法2016(案)』ではエビデンスと実診療に基づいた検査法や治療法をどれくらい強く勧めているかを示す「有効性による分類(推奨度)A・B・C1・C2・D」と「研究デザインによる分類(エビデンスレベル)Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ・Ⅳ・Ⅴ・Ⅵ」に分類されている。
頸動脈超音波検査の意義(推奨度の現状)からmax IMTは生活習慣病例や冠動脈疾患、脳動脈疾患の相対危険度を評価できる。また、臨床における疾患リスク層別化を目的とした場合、平均内中膜厚(mean intima-media thickness:mean IMT)よりも最大内中膜厚(maximumintima-mediathickness:maxIMT)のほうが有用と考えられている。狭窄度の診断ではドプラ法による狭窄度評価が有用とされ、径狭窄率や面積狭窄率による狭窄率よりも信頼性が高いとされている。これらの推奨度とエビデンスレベルを参考に、施設内の評価項目を統一することが望まれる。現状は推奨度とエビデンスレベルを合わせて施行・評価することが望ましい。
血管径と径狭窄率の計測:内膜面と外膜面
血管径と径狭窄率の計測にはleading edge(LE)とtrailing edge(TE)を理解する必要がある(図1)。