第11回 下肢静脈におけるレポートの書き方
症例から学ぶ ビギナーのための血管超音波検査テクニック/エキスパートのための血管超音波検査テクニック
下肢静脈エコービギナーのための
レポート記載の基礎
東邦大学医療センター大森病院 臨床生理機能検査部副技師長
八鍬恒芳
下肢静脈エコーの検査法はマスターできても、レポート作成で悩むことはありませんか。今回は、深部静脈血栓症(deep venous thrombosis:DVT)のエコーにおけるレポート作成のコツを解説したいと思います。
肺塞栓リスク評価から考えた、DVTエコー診断
下肢静脈の血栓を捉えたとき、どのような部分に留意して所見を記載しているでしょうか。基本的には超音波医学会の標準的評価法1,2)や、各種ガイドラインなどを基準にして血栓評価を行っていると思います3,4)。下肢静脈エコーの検査依頼は、直接的には「深部静脈血栓症の診断」ですが、その目的の根底にあるのは「肺血栓塞栓症(pulmonary thromboembolism:PTE)のリスク評価」や「PTEの原因検索」が多く、場合によっては「奇異性塞栓症の原因検索」などがあると思います。基本的にはDVTの検索は、すなわち塞栓源の検索であり、DVTの経過観察においても「塞栓源になる血栓は存在するか、もしくは以前よりも塞栓源リスクが低下したか」を知りたいことが多いと思います。ですので、DVTエコーに関しては常に「塞栓源としてのリスク」を念頭に置いて検査を行う必要がありますし、レポート記載においても「塞栓源のリスクが現状どうなのか」を念頭に置いて所見記載する必要があります。塞栓源リスクを考えたDVT評価としては大分類として以下のものがあげられます。
1) 血栓の形態・輝度評価
血栓そのものを、まず「急性期」「亜急性期」「慢性期」などにある程度分類することが重要です。そして、特に「急性期」の血栓に関しては遊離する(塞栓になる)リスクが高いので、特に注目されるような記載が必要でしょう。大まかに血栓のエコー性状から分類した表15)と実際の血栓像を示します(図1)。
血栓の性状評価で特に重要なのは、輝度(低輝度ほど新鮮⇒塞栓源リスク高)、血栓の口径(血栓存在部位の血管膨隆性、血栓が太く血管が膨隆しているほど新鮮)などです。また、浮遊血栓の定義としては、「血栓の末梢の部分は血管壁に固着し、それより中枢の部分(5cm以上)が静脈壁に固着せず、内腔に浮遊している形態」であり、浮遊血栓では36~60%の症例に PTE を合併していると報告されています6)。