第8回 下肢動脈における膝下動脈の病変検出と評価のポイント
症例から学ぶ ビギナーのための血管超音波検査テクニック/エキスパートのための血管超音波検査テクニック
下肢動脈エコービギナーのための
膝下動脈超音波検査テクニック
東邦大学医療センター大森病院 臨床生理機能検査部副技師長
八鍬恒芳
前脛骨動脈、後脛骨動脈および腓骨動脈などの、膝窩動脈より末梢側の膝下(below knee:BK)領域における下肢動脈エコーによる観察において、手技的に苦労されている方も多いと思います。また、BK領域の動脈のエコー評価は確立されたものがほぼ存在しないため、どこまで病変を捉えればよいのか迷うことがあると思います。今回はBK領域の3分枝(前脛骨動脈、後脛骨動脈および腓骨動脈 )を観察するコツと評価法の例を記します。
BK領域における解剖と超音波像の理解
BK領域の血管は膝窩動脈から前脛骨動脈と後脛骨動脈が分岐し、その後、後脛骨動脈から腓骨動脈が分岐するのが一般的です。また、すべての血管が名称通り脛骨および腓骨の付近に沿って走行しますが、特に腓骨動脈は腓骨の近傍を走行します。3分枝すべてで伴走する静脈が2本、動脈を挟むように存在します。また、BK領域では3分枝の正常変異が存在し、特に、後脛骨動脈もしくは前脛骨動脈のいずれかが低形成や欠損を呈する例に遭遇することが多いです(図1) 1)。この場合、踝付近で腓骨動脈から連続する内果枝や交通枝を介して足背動脈や足底動脈は還流しています 。
一般的に、動脈が低形成の場合、伴走する静脈も低形成を示す場合が多いです。BK領域の動脈を捉えられない場合は伴走する静脈が存在するかを確認すると、閉塞しているのか低形成(もしくは欠損)かが判別しやすくなります(図2)。そのほか、正常変異の形態としては、3分岐が同位置で分岐しているケースや分岐の位置が異なるものなども存在します。