第15回 透析心をエコーで診る ~合併症からドライウェイトまで~
症例から学ぶ ビギナーのための血管超音波検査テクニック/エキスパートのための血管超音波検査テクニック
心臓・透析心 ビギナーのための超音波検査テクニック
西宮渡辺心臓脳・血管センター
臨床検査科・臨床工学科・放射線科
川崎俊博
透析患者の死亡原因の第一位は心不全であり、心筋梗塞・脳血管障害などを併せた心血管死が約40%を占めている1)。透析患者の生命予後、QOLの向上には心血管疾患(cardiovascular disease:CVD)合併症を的確に診断し治療することが必要である。しかし合併症の発生機序が不明なものも多く、また治療法や診断方法など明確でないものも多いのが現状である。
心エコー
透析患者における心エコーの意義は、①CVD合併症の早期発見、②CVD合併症の病態把握、③CVD合併症の治療効果判定、④心不全予防のための水分管理がある。心エコーではこれらを非侵襲的に簡便に行うことができるため、透析患者において不可欠な検査となっている。特に④に関しては、心不全が死因の第1位であり、心不全と水分管理が密接な関係にあることから、心エコーは極めて重要な役割を担っている。また、心エコーは検者の知識や技術が診断精度に大きく影響を与える検査であるため、透析心について知識を高めておく必要がある。
KDOQI(Kidney Disease Outcomes Quality Initiative)のガイドラインでは、透析導入後ドライウェイト達成時(1~3ヵ月後)に心エコー検査を実施することが推奨されている2)。また定期の心エコー検査は透析翌日の中1日に実施するのが一般的ではあるが、透析直前、透析中、透析直後など症状を訴える時期はさまざまなため、状況に応じて検査をするタイミングを変える必要がある。