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第3回 父と娘、虐待の連鎖

認知症治療30年の“ケアマネ医師”による介入困難事例へのアプローチ

第3回 父と娘、虐待の連鎖

●特殊で複雑な家族事情

 くるみクリニックの西村です。当院は、世田谷区のはずれにあり、すぐお隣は渋谷区です。

 先日、当院からほど近い地域包括支援センターで、ケアマネジャー研修会の講師を務める機会がありました。「介護と医療の連携」がテーマです。何例か事例を提示してほしいとの要望があり、当院通院中の患者さんを数人、事例として提示しました。区内の事例を提示すると、研修会参加者の受け持ち事例に当たってしまう可能性が高いので、新鮮味を期待して、すべて、お隣渋谷区の事例を提示しました。

 事例検討が終わり、みんなで感想を述べあっていたときに、オブザーバーとして参加していた世田谷区の保健師さんが手を挙げて、「最後の事例は、実は私が担当しておりまして」と切り出したのです。驚きました。その保健師さんは、世田谷区にお勤めです。しかし、私が持ってきた事例は、先ほど申し上げたように渋谷区の患者さんでした。

 ケアマネジャーさんであれば、区をまたいでサービスを提供することもあると思いますが、保健師さんが、他の自治体の事例を担当することはありえません。

 「この方は渋谷区の方なんですよ」というと、手を挙げた保健師さん含め、会場がどよめきました。こんな特殊で複雑な家族事情を抱えた介入困難事例は珍しく、レアケースだと、みなさんが思っているのです。しかし、実は似たような事例は、至るところにあるのです。数キロメートルしか離れていないのに。  

認知症治療30年の“ケアマネ医師”による介入困難事例へのアプローチ

324円/1記事(税込) 毎月1日発行(著者および編集の都合により発行が前後することがございます)

筆者プロフィール

西村知香

くるみクリニック 院長

西村知香

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