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第8回 心を開かない娘

認知症治療30年の“ケアマネ医師”による介入困難事例へのアプローチ

第8回 心を開かない娘

●少しでも笑顔で過ごしてもらうことが、援助する私たちの目標

 くるみクリニックの西村です。まだ寒い日が続いていますね。寒くても、認知症の患者さんは1日に2~30人はいらっしゃいます。

 認知症の親を連れてくる娘さん、息子さん、いろんな方がいらっしゃいます。お父さんを目の前にして、「最近父は、何を食べたかすぐに忘れてしまうんですよ」と、困り顔で話します。そんな話を目の前でされると、悲しそうな顔をしたり、怒ったり、あるいは無関心だったりと、大概は良い反応はありません。

 ところがたまに、良いことを言う方がいて驚きます。その方は、困り顔の娘さんの方を向いて、「朝食べた物を忘れてもいいんだよ。食べた時に、美味しければいいんだよ」と言いました。いつも朝ごはんを作ってくれる娘さんに、満面の笑顔で、そう言いました。私と娘さんは、思わず顔を見合わせてしまいました。「素敵なお父さんですね!」思わず感想が口をついて出ました。そして、私も思わず笑顔になりました。娘さんも笑っていました。認知症になっても、皆が笑顔になれることもあるのです。

 もちろん、認知症の親御さんとの生活は、笑顔ばかりでは送れないと思います。しかし、少しでも笑顔で過ごしてもらえることが、援助する私たちの目標でもあります。



認知症治療30年の“ケアマネ医師”による介入困難事例へのアプローチ

324円/1記事(税込) 毎月1日発行(著者および編集の都合により発行が前後することがございます)

筆者プロフィール

西村知香

くるみクリニック 院長

西村知香

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