第2回 冠動脈の解剖
心カテスタッフのための“つなげる”マガジン『α』
第2回目です。みなさま、お付き合いありがとうございます。 前回は「心カテスタッフたるもの」というようなテーマでお話させていただきました。今回からは心カテスタッフとして知っておきたい知識についてお話したいと思います。教わる側の方々だけでなく、教える側の方々にも参考にしていただくため、できる限り“伝え方”についてもお話し、“わかりやすく教える”“理解させる”についてもメッセージをお伝えできればと思っています。それでは、今回は「解剖」についてです!
解剖について詳しくはWCCMが発刊している『コメディカルによるコメディカルのための「PCIを知る。」セミナー』にも詳しく紹介しています。ご興味あればぜひご参照ください。
心臓全体と冠動脈
心臓は胸骨の内側、縦隔内で肺に包み守られるようにして収まっています。心臓は胸郭の真ん中やや左側に位置します。正面から心臓を見ると4つの部屋が真正面に見えるのではなく、少し左房・左室が奥に傾いており、右房・右室が正面に見える形になっています。心臓の右側には右冠動脈、左側には左冠動脈の前下行枝が見えています。大きくわけて3本の冠動脈が存在しますが、その1本は心臓前側を下る前下行枝です。この前下行枝は前室間溝を走行しています。この前下行枝は3本の冠動脈のなかでいちばん栄養範囲が大きく、心臓の動きにとって大変重要な血管となります。
(図1 心臓の全体図)
冠動脈理解のためのすすめ
冠動脈の解剖は冠動脈造影を理解するのみならず、心電図の理解や治療方針の理解、合併症の発生リスクなど、心カテスタッフにとってとても大切な基礎知識です。ただ、動いていること、複雑に絡み合うこと、そして画面では2次元の平面でしか情報がないということから、理解することは難しいと思います。そこで、立体的により身近に理解してもらうために「冠動脈を書く」というようなことを考えてみました。
用意するのは左手と手袋そしてマジックペン。まず左手に手袋を着けて、親指を中に入れグーにします。これが握りこぶし1個分の心臓になります。それではペンで冠動脈を書いていきます。言葉にすると難しくなるので【動画】を見ながら書いてみてください。
まず人差し指第3関節から小指を過ぎた第3関節まで長が~く1本の線を引きます(①)。これが前下行枝になります。そしてその長い1本の途中で2~3本の枝を手の甲に向かって書きます(②)。これが対角枝(ダイアゴナール)になります。そして先程の長い1本のスタート地点、人差し指根本から親指に向かってクルッと1本の円を描きます(③)。これがクルッと旋回する回旋枝です。そして、その円の途中、手の甲に向かって1本枝を書きます(④)。これがSeg.12(鈍角枝)です。今度は、人差し指第2関節から人差し指の上を通って爪まで線を書きます(⑤)。そして爪の上を人差し指から小指まで線を書きます(⑥)。最後に、第1関節の上に1本線を書きます(⑦)。これが右冠動脈となります。爪の上に書いたのがSeg.4PDになり、最後に第1関節に書いた枝が鋭角枝となります。
(図3 線の引きかた)
これで、冠動脈の完成です。まずはじっくり立体的なイメージを理解するようにしてください。また、他の人にも同じものを書いてもらい、外からも冠動脈を見てみてください。きっと理解が深まるはずです。 では手に書いた冠動脈をみながら一本ずつ詳しく見ていきましょう。