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最終回 周囲の人たちから、患者さんへのおむつのあて方を理解してもらえない……

「むつき庵」浜田きよ子が説く! ナースのための排せつケア道場

最終回 周囲の人たちから、患者さんへのおむつのあて方を理解してもらえない……


○はじめに


 今回は、担当している人の「周囲の人たちから、患者さんへのおむつのあて方を理解してもらえない……」という看護師のお悩みをご紹介します。そのなかで、適切なおむつの選択とあて方を周知させ、説得するだけではなく納得してもらうといった視点から、チームで排せつケアを行うことについて説明しています。また、コラムでは、特別養護老人ホーム絹島荘・介護福祉士の田中陽子さんと浜田きよ子先生の対談記事『介護現場における“壁と卵”』の「仕方ないで終わらせていいの?」と周囲の人に問いかける排せつケアについて紹介しています。まずは、看護師の悩みごとを聞いてみましょう。



○1.病棟看護師の悩みごと……


 Aさんはおむつからの尿漏れが頻繁にあり、寝衣やシーツまで汚染し、何度も交換しなければならないため、看護師も困っています。特に夜勤では、看護師の人数も少なく、シーツまで交換するのは大変だということもあり、漏れが生じると尿とりパッドの枚数が増えてしまい、なかにはアウターの重ねあてをする人までいます。おむつで異様に膨らんだお尻まわりを何とかしたいと思い適切なおむつのあて方を学んできたので、勉強会を開いて周囲に伝えようとするのですが、先輩の看護師からは「ここの患者さんたちは拘縮や変形もあるし、そんなあて方では漏れてしまいます。このやり方でないと無理です」と言われ、後輩の看護師からは「理屈はわかりますが、漏れたら困ります。ここでは決まったとおりにしかできません」と言われてしまい、学んできたことを受け入れてもらえません。適切なおむつのあて方を周囲の人たちから理解してもらい、Aさんだけでなく病棟全体でおむつのあて方を見直して、改善していきたいのですが……。(病棟看護師) 


○2.アセスメント―Aさんの状態を評価する


〈Aさんの状態〉

・性別/年齢:70歳、男性。

・現病歴:神経難病である進行性核上性麻痺の発病から8年が経過し、寝たきりの状態で、自力での体動なく、日常生活全般で全介助が必要な状態です。筋硬直あり、拘縮・変形が強く、るい痩もみられます。誤嚥を繰り返すため、胃瘻を造設し経管栄養を注入中ですが、家族面会時に少量のゼリー、プリンなどを口にすることもあります。

・家族構成:妻と娘夫婦、孫と同居しており、週に2回程度面会があります。

・排泄:便・尿失禁あり。おむつを使用中です。緩下薬を内服し、座薬を使用しています。ブリストルスケール6~7の排便が、3日に1回あります。

・コミュニケーション:痛みに対して顔をしかめることもありますが、発語はなく、意思疎通を図れません。


病棟の概要〉

・神経難病患者を中心とした50床の神経内科病棟。90%以上の患者さんがおむつを着用しており、10時、13時、16時、20時、1時、6時と、汚染時には随時おむつ交換をしています(20時、1時、6時は夜勤でのおむつ交換)。排泄ケアにかかわる看護師は25人、2交代勤務で2人夜勤です。


「むつき庵」浜田きよ子が説く! ナースのための排せつケア道場

 病院・在宅の患者さんが、心理的な悩み、薬剤の服用、あるいは認知症など、さまざまな要因から十分な排せつケアを受けられていないなか、おむつや排せつ用具を用いてできる最良の排せつケア・看護とはどのようなものでしょうか?
 看護師・訪問看護師が抱えるおむつケア・排せつケアへの悩み事に対して、「その人にとっての気持ちよい排せつ」をモットーに排せつケアの研修・講習を全国地で開催し、排せつ用具の情報館「むつき庵」を運営する浜田きよ子先生が、患者さんにとって本当に求められている排せつケアの考え方、ノウハウをしっかりとアドバイス。これまで14年にわたって蓄積してきた排せつの症例検討と指導の経験をもとに、浜田きよ子先生が皮膚・排泄ケア認定看護師、認知症認定看護師、訪問看護師、理学療法士、薬剤師、保健師などの先生方と一緒に、おむつ・排せつ用具の使い方だけでなく、医療、住環境、食事、そしてそのご家族との向き合い方などについて、全人的な視点から読者の皆さんに伝授します。さらに「むつき庵」が主催する「おむつフィッター」のおさらいもできますし、浜田きよ子先生とケアの最前線で活躍する専門家による対談のコラムもついています。
 病院でも、在宅でも、患者さんの排せつやスキンケアにじっくりと向き合いたいナースの皆さま、看護だけでなく介護の視点も踏まえた新しい「排せつケアのグッドデザイン」を一緒に考えていきましょう!

324円/1記事(税込) 毎月1回15日発行(著者および編集の都合により発行が前後することがございます)

筆者プロフィール

浜田きよ子

排泄用具の情報館「むつき庵」代表・高齢生活研究所所長

浜田きよ子

排泄用具の情報館「むつき庵」代表、高齢生活研究所所長、福祉住環境コーディネーター協会理事、NPO 快適な排尿をめざす全国ネットの会理事。同志社大学文学部社会学科卒業。2005年、「京都府あけぼの賞」を受賞。2007年、日本認知症ケア学会「読売認知症ケア賞・奨励賞」を受賞。主な著書に、『介護をこえて~高齢者の暮らしを支えるために~』(NHK 出版)、『排泄ケアが暮らしを変える~百人百様の老いを支えて~』(ミネルヴァ書房)、『ヘルパー以前の介護の常識』(講談社)、『高齢者のQOLを高めて介護者の悩みも解決! おむつトラブル110番』(メディカ出版)、ほか多数。

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