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第1回 水様便がおむつから漏れて困る……。

「むつき庵」浜田きよ子が説く! ナースのための排せつケア道場

第1回 水様便がおむつから漏れて困る……。

はじめに

 今回は担当している人の「水様便がおむつから漏れて困る」という訪問看護師のお悩みをご紹介します。まずは訪問看護師のお悩みごとを聞いてみましょう。コラムでは看護師で臨床哲学専攻の西川 先生と浜田きよ子先生による看護と介護の間で揺れるケアについての対談をご紹介いたします。ぜひお楽しみください!

1.訪問看護師の悩みごと……

 私が担当しているAさんなのですが、1年前に転倒し、大腿骨を骨折してしまいました。リハビリテーションをがんばっていたのですが、思うように筋力が戻らず、現在はほぼベッド上で生活をしています。ご主人との2人暮らしのため、毎日ヘルパーさんが入っていますが、生活全般をケアするのは難しい状態です。
 訪問看護は午前9時なのですが、頻繁に水様便が漏れてしまっています。ご本人もたいへん不快感を覚えていますが、においのせいでご主人との関係性も悪化してしまっている様子です。そのためか、最近では食事量が減ってきており、空腹を満たすために水分を多くとってしまっているようです。ご本人は「少し介助をしてもらえれば、ポータブルトイレで排せつできる」と望んでいますが、ご主人が「おむつでいい」と譲ってくれません。まずは水様便だけでも改善できるといいのですが……。(訪問看護師A)

2.アセスメント ―Aさんの場合

・年齢・性別:72歳、女性。

・家族構成:ご主人とふたり暮らし。子どもはいるが、遠方に住んでいる。ご主人は亭主関白。

・食事:1日3回。1回の量は少なめ。手軽に食べられる米飯やパンが多い。

・排尿:おむつにしているため、量は不明。

・排便:3日に1回くらいのペースで排便。ほとんどが水様便。

・排せつ用具:テープ止め紙おむつ(Lサイズ)に尿とりパッド(大・中各1枚)。

・生活習慣:ほとんどの時間をベッド上で過ごしている。週1回、デイサービスを利用。

・既往歴:骨粗鬆症、高血圧、慢性便秘。

・服用薬:リセドロン酸ナトリウム錠(アクトネル(R))を週1回服用。アムロジピン(ノルバスク(R))、酸化マグネシウム(マグミット(R))を毎日服用。センノサイド錠(プルゼニド(R))を3日に1回服用



3.このアセスメントをどう読む?

 アセスメントをみると、この家庭のキーパーソンはご主人であることがわかります。ご本人は介助を受けて、ポータブルトイレの使用を希望しています。また、においの問題からご主人との関係が悪化してしまっており、単に水様便を改善するだけでは問題が解決しないといえます。使用している紙おむつのサイズについての見直しも必要であると考えます。尿とりパッドを重ねていることで、股まわりがブカブカになってしまっている可能性もあります。食事面をみると、水分を多くとってしまっていることも水様便の原因ではないかと考えられます。

では、このアセスメントをもとに、どのような排せつケアがよいのか考えてみましょう。


「むつき庵」浜田きよ子が説く! ナースのための排せつケア道場

 病院・在宅の患者さんが、心理的な悩み、薬剤の服用、あるいは認知症など、さまざまな要因から十分な排せつケアを受けられていないなか、おむつや排せつ用具を用いてできる最良の排せつケア・看護とはどのようなものでしょうか?
 看護師・訪問看護師が抱えるおむつケア・排せつケアへの悩み事に対して、「その人にとっての気持ちよい排せつ」をモットーに排せつケアの研修・講習を全国地で開催し、排せつ用具の情報館「むつき庵」を運営する浜田きよ子先生が、患者さんにとって本当に求められている排せつケアの考え方、ノウハウをしっかりとアドバイス。これまで14年にわたって蓄積してきた排せつの症例検討と指導の経験をもとに、浜田きよ子先生が皮膚・排泄ケア認定看護師、認知症認定看護師、訪問看護師、理学療法士、薬剤師、保健師などの先生方と一緒に、おむつ・排せつ用具の使い方だけでなく、医療、住環境、食事、そしてそのご家族との向き合い方などについて、全人的な視点から読者の皆さんに伝授します。さらに「むつき庵」が主催する「おむつフィッター」のおさらいもできますし、浜田きよ子先生とケアの最前線で活躍する専門家による対談のコラムもついています。
 病院でも、在宅でも、患者さんの排せつやスキンケアにじっくりと向き合いたいナースの皆さま、看護だけでなく介護の視点も踏まえた新しい「排せつケアのグッドデザイン」を一緒に考えていきましょう!

324円/1記事(税込) 毎月1回15日発行(著者および編集の都合により発行が前後することがございます)

筆者プロフィール

浜田きよ子

排泄用具の情報館「むつき庵」代表・高齢生活研究所所長

浜田きよ子

排泄用具の情報館「むつき庵」代表、高齢生活研究所所長、福祉住環境コーディネーター協会理事、NPO 快適な排尿をめざす全国ネットの会理事。同志社大学文学部社会学科卒業。2005年、「京都府あけぼの賞」を受賞。2007年、日本認知症ケア学会「読売認知症ケア賞・奨励賞」を受賞。主な著書に、『介護をこえて~高齢者の暮らしを支えるために~』(NHK 出版)、『排泄ケアが暮らしを変える~百人百様の老いを支えて~』(ミネルヴァ書房)、『ヘルパー以前の介護の常識』(講談社)、『高齢者のQOLを高めて介護者の悩みも解決! おむつトラブル110番』(メディカ出版)、ほか多数。

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