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第9回 脳出血後遺症による排泄障害があり、尿が多くておむつから漏れる……。

「むつき庵」浜田きよ子が説く! ナースのための排せつケア道場

第9回 脳出血後遺症による排泄障害があり、尿が多くておむつから漏れる……。


○はじめに


 今回は、担当している人の「脳出血後遺症による排泄障害があり、尿が多くておむつから漏れる・・・・・・」という看護師のお悩みをご紹介します。そのなかで、おむつのあて方、尿漏れのタイミング、排尿量や水分摂取量、ADL状況を把握したり、排泄用具などを熟知したうえで在宅と職場で排泄用具をうまく使い分けたりするといった視点から、排せつケアを行うことについて説明しています。また、コラムでは、作業療法士の小林貴代さん(森ノ宮医療大学作業療法学科教授・元おむつフィッター倶楽部代表世話人)と浜田きよ子先生による対談記事『おむつフィッター倶楽部設立』『おむつ検定開始』の「思いをかたちにしていく」排せつケアをめぐる一節を紹介しています。まずは、看護師の悩みごとを聞いてみましょう。  



○1.看護師の悩みごと……


 急性期病院の脳卒中ケアユニットで入院しているAさんは、休日にしていた農作業中に転倒しました。意識障害・右片麻痺症状が出現し、救急車で近医へ搬送され検査にて脳内出血(左被殻出血)を認めたため、急性期病院(当院)への転医搬送となりました。
 搬入後、血管造影(digital subtraction angiography:DSA)検査を行い、脳動脈瘤・脳動静脈奇形(arteriovenous malformation:AVM)がないことを確認したため、至急、開頭血腫除去術を受けました。来院時、意識レベルはジャパン・コーマ・スケール(Japan Coma Scale:JCS)で30、発語はなく、失語症状を認めました。 
 手術後、早期離床・リハビリテーションを目的として、膀胱留置カテーテルを抜去しましたが、自然排便はあるものの、脳内出血(左被殻出血)による排泄障害があり、尿意も便意もないまま失禁状態となってしまいました。現在は、おむつを使用していますが、1回尿量が多く、おむつから漏れて困っています。 
 今後、日常生活動作での排泄動作を確立し、現在のおむつからの漏れにはどう対応すればいいのでしょうか・・・・・・。  

○2.アセスメント―Aさんの状態を評価する

〈Aさんの状態〉

・年齢/性別:39歳、男性。

・現病歴:農作業中に転倒し、意識障害・右片麻痺症状が出現したため、救急車で近医へ搬送された。検査にて脳内出血(左被殻出血)を認めたため、急性期病院(当院)への転医搬送となった。手術後、早期離床・リハビリテーションを目的として、膀胱留置カテーテルを抜去したが、自然排便はあるものの、脳内出血(左被殻出血)による排泄障害があり、尿意も便意もないまま失禁状態となった。

  搬入後、血管造影(DSA)検査を行い、脳動脈瘤・脳動静脈奇形(AVM)がないことを確認したため、至急、開頭血腫除去術を受けた。来院時、意識レベルはジャパン・コーマ・スケール(JCS)(表1)で30、発語はなく、失語症状を認めた。

・身長・体重:169㎝、98㎏。 

・家族:母親と2人暮らし(姉がいるものの、結婚したため別居)。キーパーソンは、母親と姉。

・既往歴:高血圧・糖尿病・高脂血症。

・状態:脳卒中ケアユニット。

・本人の希望:運動性失語症状があるため、確認できず。

・家族の希望:できるだけAさんの希望をかなえてあげたい(職場復帰をさせてあげたい)。

・服用薬:ブロプレス錠8・8mg・1錠(朝)、アダラートCR錠20mg・1錠(朝)、クレストールOD錠・2.5mg:1錠(夕)を服用中。


「むつき庵」浜田きよ子が説く! ナースのための排せつケア道場

 病院・在宅の患者さんが、心理的な悩み、薬剤の服用、あるいは認知症など、さまざまな要因から十分な排せつケアを受けられていないなか、おむつや排せつ用具を用いてできる最良の排せつケア・看護とはどのようなものでしょうか?
 看護師・訪問看護師が抱えるおむつケア・排せつケアへの悩み事に対して、「その人にとっての気持ちよい排せつ」をモットーに排せつケアの研修・講習を全国地で開催し、排せつ用具の情報館「むつき庵」を運営する浜田きよ子先生が、患者さんにとって本当に求められている排せつケアの考え方、ノウハウをしっかりとアドバイス。これまで14年にわたって蓄積してきた排せつの症例検討と指導の経験をもとに、浜田きよ子先生が皮膚・排泄ケア認定看護師、認知症認定看護師、訪問看護師、理学療法士、薬剤師、保健師などの先生方と一緒に、おむつ・排せつ用具の使い方だけでなく、医療、住環境、食事、そしてそのご家族との向き合い方などについて、全人的な視点から読者の皆さんに伝授します。さらに「むつき庵」が主催する「おむつフィッター」のおさらいもできますし、浜田きよ子先生とケアの最前線で活躍する専門家による対談のコラムもついています。
 病院でも、在宅でも、患者さんの排せつやスキンケアにじっくりと向き合いたいナースの皆さま、看護だけでなく介護の視点も踏まえた新しい「排せつケアのグッドデザイン」を一緒に考えていきましょう!

324円/1記事(税込) 毎月1回15日発行(著者および編集の都合により発行が前後することがございます)

筆者プロフィール

浜田きよ子

排泄用具の情報館「むつき庵」代表・高齢生活研究所所長

浜田きよ子

排泄用具の情報館「むつき庵」代表、高齢生活研究所所長、福祉住環境コーディネーター協会理事、NPO 快適な排尿をめざす全国ネットの会理事。同志社大学文学部社会学科卒業。2005年、「京都府あけぼの賞」を受賞。2007年、日本認知症ケア学会「読売認知症ケア賞・奨励賞」を受賞。主な著書に、『介護をこえて~高齢者の暮らしを支えるために~』(NHK 出版)、『排泄ケアが暮らしを変える~百人百様の老いを支えて~』(ミネルヴァ書房)、『ヘルパー以前の介護の常識』(講談社)、『高齢者のQOLを高めて介護者の悩みも解決! おむつトラブル110番』(メディカ出版)、ほか多数。

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