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第6回 ほぼ寝たきりで、おむつを使用している患者さんの肛門周辺のびらんが治らない……。

「むつき庵」浜田きよ子が説く! ナースのための排せつケア道場

第6回 ほぼ寝たきりで、おむつを使用している患者さんの肛門周辺のびらんが治らない……。
○はじめに


 今回は、担当している人の「ほぼ寝たきりで、おむつを使用している患者さんの肛門周辺のびらんが治らない・・・・・・」という看護師のお悩みをご紹介します。

 そのなかで、坐薬処方により発生する浸出液の扱いや、皮膚皮膜剤、粉状皮膚保護剤の使い方のほかにも、自動採尿器の使用や臀部の環境改善、そして患者さんの痛みを軽減するおむつのアウターとインナーの組み合わせといったことについて説明しています。また、コラムでは、リブドゥコーポレーションの三宅浩史さんと浜田きよ子先生による対談記事『そのモレは失禁じゃなく排尿だ。《遣尿症》を知る』の「尿失禁と排尿を見分ける」ケアをめぐる一節を紹介しています。まずは、看護師の悩みごとを聞いてみましょう。  



○1.看護師の悩みごと……


 Aさんはインフルエンザ後、特発性肺線維症の憎悪・慢性心不全があり酸素吸入中で、ほぼベッド上で生活している状態です。おむつ内に尿失禁があり、排便が4~5回/日あり、痔核の腫れもあります。
 肛門周囲にピリピリとした痛みの訴えがあり、肛門の周囲に発赤・びらんができていて、みるからに痛そうです。おむつかぶれと思われる発赤があり、アズノール軟膏を2回/日塗布していましたが改善せず、びらんになっています。医師の指示で、ハイドロサイトを使用開始しましたが、排便ごとの交換の必要があり、また尿による汚染もあり、おむつ交換が頻回になっています。また、サトウザルベ軟膏を塗布して消毒したガーゼに変更していますが、なかなか治りません。このびらんを治してAさんの痛みをとるには、どうすればよいのでしょうか。 

○2.アセスメント―Aさんの状態を評価する


〈Aさんの状態〉

・年齢/性別90歳、女性 

・家族構成:長男夫婦と同居しているが嫁も働いているため、他県に嫁いでいる長女が帰省して9時から20時まで付き添っています。キーパーソンは長女。

・現病歴:インフルエンザ感染後、呼吸困難感があり、特発性肺線維症と診断されて、入院しました。入院後、酸素吸入中でプレドニン療法中です。体動時の呼吸困難、および筋力低下あり。ほぼベッド上で生活しています。

・排尿:インナーパッド内に尿失禁があります。利尿薬を使用しているため頻尿です。インナーパッドは3~4回分の吸収量があるものを使用し、テープタイプのアウターを使用しています。ほぼ寝たきりのため、尿が肛門のほうに流れて、発赤やただれた部分に触れています。

・排便:4~5回/日。ブリストルスケール5~6。痔核の発赤・腫脹あり。浸出液あり。肛門周囲の湿潤あり。排便のたびに洗浄剤を使用して洗浄しています。使用している洗浄剤は、ベビーせっけん。

・皮膚:全身乾燥状態。高齢であるため、プレドニンの内服により皮膚が脆弱になっている。

「むつき庵」浜田きよ子が説く! ナースのための排せつケア道場

 病院・在宅の患者さんが、心理的な悩み、薬剤の服用、あるいは認知症など、さまざまな要因から十分な排せつケアを受けられていないなか、おむつや排せつ用具を用いてできる最良の排せつケア・看護とはどのようなものでしょうか?
 看護師・訪問看護師が抱えるおむつケア・排せつケアへの悩み事に対して、「その人にとっての気持ちよい排せつ」をモットーに排せつケアの研修・講習を全国地で開催し、排せつ用具の情報館「むつき庵」を運営する浜田きよ子先生が、患者さんにとって本当に求められている排せつケアの考え方、ノウハウをしっかりとアドバイス。これまで14年にわたって蓄積してきた排せつの症例検討と指導の経験をもとに、浜田きよ子先生が皮膚・排泄ケア認定看護師、認知症認定看護師、訪問看護師、理学療法士、薬剤師、保健師などの先生方と一緒に、おむつ・排せつ用具の使い方だけでなく、医療、住環境、食事、そしてそのご家族との向き合い方などについて、全人的な視点から読者の皆さんに伝授します。さらに「むつき庵」が主催する「おむつフィッター」のおさらいもできますし、浜田きよ子先生とケアの最前線で活躍する専門家による対談のコラムもついています。
 病院でも、在宅でも、患者さんの排せつやスキンケアにじっくりと向き合いたいナースの皆さま、看護だけでなく介護の視点も踏まえた新しい「排せつケアのグッドデザイン」を一緒に考えていきましょう!

324円/1記事(税込) 毎月1回15日発行(著者および編集の都合により発行が前後することがございます)

筆者プロフィール

浜田きよ子

排泄用具の情報館「むつき庵」代表・高齢生活研究所所長

浜田きよ子

排泄用具の情報館「むつき庵」代表、高齢生活研究所所長、福祉住環境コーディネーター協会理事、NPO 快適な排尿をめざす全国ネットの会理事。同志社大学文学部社会学科卒業。2005年、「京都府あけぼの賞」を受賞。2007年、日本認知症ケア学会「読売認知症ケア賞・奨励賞」を受賞。主な著書に、『介護をこえて~高齢者の暮らしを支えるために~』(NHK 出版)、『排泄ケアが暮らしを変える~百人百様の老いを支えて~』(ミネルヴァ書房)、『ヘルパー以前の介護の常識』(講談社)、『高齢者のQOLを高めて介護者の悩みも解決! おむつトラブル110番』(メディカ出版)、ほか多数。

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