第4回 おむつのせいで寝返りがしにくくなった……。
「むつき庵」浜田きよ子が説く! ナースのための排せつケア道場
はじめに
今回は、担当している人の「おむつのせいで寝返りがしにくくなった……」という看護師のお悩みをご紹介します。そのなかで、おむつの選択やあて方が姿勢に及ぼす影響や正しいおむつのあて方、歩行補助具やポータブルトイレの利用などのほかにも、自宅の住まいの環境を想像して患者さんが自宅で自立した排泄を行えるようにすることについても説明しています。また、コラムでは、介護福祉士の田中陽子さんと浜田きよ子先生による対談記事『介護現場における“壁と卵”』の「相手に身を置く」ケアをめぐる一節をご紹介します。まずは、看護師の悩みごとを聞いてみましょう。
1.看護師の悩みごと……
患者さんには尿意・便意がありますが、発熱と酸素吸入状態であることに加えて、本人が動きたがらないので、入院と同時にテープ止め紙おむつと尿とりパッドを使用しました。食事はベッドの頭部を挙上して、対応しています。点滴加療中のため尿量が多く、おむつから尿が漏れたり、衣服やシーツの汚染が多くなったりして、困っています。 入院当初は自立していた起居移乗動作が徐々に困難となり、介助が必要になりました。また、おむつのせいで寝返りがしにくくなっているようです。このままでは、全身の廃用が進むのではないかと心配です。車いすへの離床を図りたいのですが、起居移乗動作を介助するとき、股関節が曲がらず、介助が大変です。車いすへの移乗後、座位姿勢は“ずっこけ座り”となり、よい座位姿勢に直すことも難しいです。入院前のように自立した一人暮らしができるように、早く元気にしてあげたいです。 (看護師)
2.アセスメント―Aさんの状態を評価する
〈Aさんの状態〉
・性別/年齢:86歳、女性。
・現病歴:気管支肺炎と診断され、入院しました。脳梗塞による軽度の右片麻痺があります。入院前、自宅では右 足部を若干引きずるものの、普通のパンツをはき、排泄もトイレで自立し、失敗はありませんでした。屋外はT字杖を使って一人で歩けていました。入院後も発熱が続き、酸素飽和度の低下から酸素吸入が開始されましたが、全身のけん怠感が強くなり、ベッド上で臥床状態が続いています。
・既往歴:10年前の脳梗塞により、右片麻痺となりました。
・認知面:認知機能は年齢相応です。自己管理能力はあります。
・精神面:人に迷惑をかけたくないという思いが強く、「自分のことは自分で行いたい」という意識が高いです。
・身体状況:両膝の変形性膝関節症によりO脚変形が認められますが、現在、痛みはありません。姿勢は、加齢による軽度の円背、骨盤後傾位が認められます。入院当初より全身のけん怠感が著明で、動くことができません。
・排泄:おむつはテープ止め紙おむつと尿とりパッドを2枚使用して、対応しています。
・暮らし:一人暮らし。週2回の訪問介護を利用していました。ADLが自立していないため、自宅に戻れない状況となっています。
・通院:週3回、当院の外来リハビリテーションに通院していました。