第2回 膝の関節が拘縮していて、おむつがあてにくい……。
「むつき庵」浜田きよ子が説く! ナースのための排せつケア道場
はじめに
今回は担当している人の「膝の関節が拘縮していて、おむつがあてにくい……」という看護師のお悩みをご紹介します。まずは看護師のお悩みごとを聞いてみましょう。おむつのよいあて方と悪いあて方の違いについても、動画とともに解説します。また、コラムでは、むつき庵の大坪麻理さんと浜田きよ子先生による対談記事『何者でもない私がそのまま生きる』の「一期一会」のケアをめぐる一節をご紹介します。ぜひお楽しみください!
1.看護師の悩みごと……
Aさんは脳梗塞の後遺症で半身麻痺がある方です。寝たきりの状態でほぼベッド上で生活をしています。身体拘縮がありますが、どんどんひどくなってきており、介助をするにも困難な状況が多々あります。その一つがおむつ交換なのですが、膝の拘縮が強く、脚自体も閉じる方向に力が入っており、おむつをあてるだけでもひと苦労です。なかなか脚も開かないので、あてるときも外すときも、無理やり脚の間を通さなければならないため、どうしても引き抜くかたちになってしまい、おむつが擦れて皮膚剥離を起こしてしまうこともあります。なんとかおむつを上手にあてたいのですが……。(看護師)
2.アセスメント①―Aさんの状態を評価する
〈Aさんの状態〉・性別/年齢:78歳、男性。
・既往歴:脳梗塞。
・意識状態:意思疎通は困難、苦痛なときには声を出すことがある。
・身体状態:脳梗塞の後遺症により右半身麻痺。
現在は全身の拘縮があり、随意的な動きはみられない。
・排尿:おむつを使用している。おむつ交換は1日7回程度。
・排便:3日に1回、浣腸にて排便。
・おむつ:テープ止め紙おむつ、尿とりパッド(大1枚)。
・生活習慣:ほとんどの時間をベッド上で過ごしている。
2時間ごとの体位変換を実施。
・姿勢管理:左右どちらかの側臥位。
腕にはクッションを抱かせており、背中に枕、膝の間にクッションを使用している。
・おむつ交換時の方法:膝の間がほとんど開いていないので、少しでも膝の間が開くように、
1人が左右に広げるようにし、その間にもう1人がおむつを通している。
1人で介助をしなければいけないときには、力任せになるが、
膝の間をなんとか通すようにしている。
3.アセスメント②―Aさんの状態を分析する
Aさんの状態を評価すると、拘縮の強いAさんになんとかおむつをあてようとするため、無理におむつを股の間に通したり、2人での介助の際には1人が力で脚を広げておむつをあてたりしていることがわかります。力任せの介助をされたり、無理やり介助をされたりすることで、Aさんは痛みや不快感を感じ、そのことでさらに緊張が高まってしまいます。そのようなケアが繰り返されると拘縮は一段と強くなってしまうことが考えられますし、おむつが皮膚に擦れることで、皮膚剥離を起こしてしまうこともあります。また体位変換は2時間ごとにしているものの、Aさんがリラックスして寝ることのできる姿勢になっていないことにも注意する必要があります。そのため、Aさんの緊張は緩むことがないと、拘縮が強くなってしまう原因となります。