広がるつながる バスキュラーナーシング 第11回:「リンパ浮腫における診断と治療」「リンパ浮腫の保存的治療と看護」ほか
広がるつながる バスキュラーナーシング
リンパ浮腫における診断と治療
公益財団法人がん研究会有明病院
医療安全管理部
保田知生
リンパ浮腫という疾患が認識された時期は、はっきりしていません。リンパ循環が発見されたのは、1651年にJean Pecquetが胸管を小動物に発見したことに始まります。古くは下肢の原因不明の腫れとして捉えられていたリンパ浮腫という疾患が、いつ頃確定診断されたのか、リンパ循環の疾患として認識された時期は残念ながら今のところ不明です。少なくとも現段階でもリンパ浮腫の確定診断検査であるリンパ管シンチグラフィは保険適用とはなっておらず、鑑別診断は特に重要です。本稿ではリンパ浮腫の成因と鑑別診断を詳述します。
浮腫の原因からの分類とリンパ浮腫の鑑別診断
リンパ浮腫は、原発性リンパ浮腫と続発性リンパ浮腫に大別されます。しかしその他の浮腫性疾患が否定されないと、現在の日本の医療システムでは診断が不可能な場合があります。海外では確定診断のためにリンパ管シンチが通常用いられていますが、本邦では保険適用はなく、これが障壁となって普及していません。このため、すべてのリンパ浮腫は除外診断ができなければ診断することはできないのです。
以下の表11)のように、浮腫性疾患は全身性と局所性に大別されます。
全身性のなかには原因不明の特発性浮腫2)もあり、正しい診断を導き出すためにはリンパ浮腫にかかわる医療者の鑑別診断能力を高める以外にありません。浮腫性疾患は全身性と局所性に大別された後、静水圧の上昇によるもの、膠質浸透圧の上昇によるもの、浸透圧亢進によるもの、間質での異常やリンパ還流低下によるもの、上記のどれにも分類できないもの(その他)に分類されます。薬剤性は静水圧上昇によるもの、浸透圧亢進に働くものがあるので、表1-右を参照してください。