広がるつながる バスキュラーナーシング 第7回:「バスキュラーアクセスと上肢血流障害」「バスキュラーアクセスの管理」ほか
広がるつながる バスキュラーナーシング
バスキュラーアクセスと上肢血流障害
大阪労災病院
末梢血管外科部長
中村 隆
バスキュラーアクセス(vascular access:VA)に関連する上肢血流障害としてスチール症候群があります。スチール(steal)とは「盗む」という意味で、VA作製後に静脈に動脈血が「盗まれる」ことによって生じる病態です。
図1は手関節部での橈骨動脈—橈側皮静脈内シャントです。静脈は低圧であるため、橈骨動脈の中枢側のみならず尺骨動脈の血流も手掌動脈弓を介して橈骨動脈を逆流してシャントに流入します。そのため、手指への動脈血流が減少します。この現象はシャントの80~90%で見られると言われています。ほとんどの場合は側副血行路の発達、末梢動脈拡張、心拍出量増加などの代償機構により、臨床的に問題になることはありませんが、代償機構が十分に働かない場合には吻合部末梢側における虚血症状、いわゆるスチール症候群を発症します。