広がるつながる バスキュラーナーシング 第2回:「下肢静脈瘤の診断と治療」「静脈瘤の予防と看護」ほか
広がるつながる バスキュラーナーシング
下肢静脈瘤の診断と治療
長崎血管外科クリニック 多田誠一
下肢静脈瘤血管内焼灼術が2011年に保険収載され、2014年に1470nmレーザーと高周波焼灼が許可された後、日帰り手術は年々増加し、バスキュラーナースも熟知すべき疾患となってきました。
静脈は、心臓に向かって血液を返す血管であり、逆流防止弁があります。妊娠出産、立ち仕事等で弁がゆるんで逆流を生じると、下肢静脈瘤が発生します(図1)。静脈弁不全により生じる一次性静脈瘤であれば手術可能ですが、深部静脈に血栓が生じて、やむを得ず表在静脈が拡張している二次性静脈瘤の場合は、手術適応はなく、圧迫療法が主体となるため、エコーによる鑑別診断が重要となります。エコー検査のポイントは、静脈血が逆流する部位・程度、深部静脈血栓の有無、深部から逆流してくる不全穿通枝の有無です。逆流時間は、表在静脈で0.5秒以上が逆流有意と判断しますが、目的とする血管をしっかり圧迫するミルキングができないと、判定を誤るため注意を要します。手術対象は症状を有する静脈瘤で、静脈のうっ滞による色素沈着・脂肪硬化等の皮膚症状のある方、潰瘍のある方であり、静脈瘤による下肢のだるさ・つり・むくみ・かゆみ等で悩んでいる方や外見で悩んでいる方も対象となります。静脈瘤があっても、症状がなく皮膚も正常な方に手術の必要はありません。
現在、伏在静脈瘤の手術治療は血管内焼灼術が主体で、レーザーと高周波がありますが、いずれも静脈内を焼灼し血管を閉塞・収縮させる方法です(図2)。レーザーは微調整可能で、高周波は7cmずつ一定の幅で焼灼します。血管内焼灼術自体は皮膚切開不要で、焼灼のみなら麻酔時間含めて20~30分で可能です。皮膚に近い静脈瘤では、つっぱりも生じるため、皮膚直下の伏在静脈に伏在静脈抜去術(ストリッピング)も有効です。主に下腿に現れる瘤の隆起は1~2mmの小切開で手術時に摘出するか、針で穿刺し硬化剤を注入し閉塞させる硬化療法を併用する方法があります。術後は手術室から歩いて退出可能な低侵襲治療です。海外ではさらに麻酔も不要な血管内の接着剤を使用する治療法も普及し始めています。