広がるつながる バスキュラーナーシング 第1回:「バスキュラーナースへの期待」「バスキュラーナースの今までとこれから」ほか
広がるつながる バスキュラーナーシング
バスキュラーナースへの期待
誠潤会水戸病院 心臓血管外科 土田博光
人口構成の高齢化、食生活の欧米化により、動脈硬化性疾患は増加の一途をたどっています。その代表である冠動脈疾患、脳血管疾患についてはさまざまな対策がとられており、医師はじめ、かかわる医療者の数も多いですが、末梢動脈疾患(peripheral arterial disease:PAD)については、診療体制も不十分で、それにかかわる医療者の数も少ないです。PADに加え、やはり高齢化に伴って増加している深部静脈血栓症は、慢性化すると患者さんのQOL低下に直結する深刻な疾患で、予防が極めて重要ですが、決して万全とはいえません。同じ静脈疾患で、疾患自体の深刻度は低いものの、放置すれば潰瘍形成などを起こし得る下肢静脈瘤は、きわめて患者数が多いにもかかわらず、圧迫療法指導がなされていないことが多いです。さらに、四肢に好発するリンパ浮腫もQOL低下をきたす深刻な疾患ですが、悪性腫瘍に伴うものしかリンパマッサージに保険適用がないなど、動脈、静脈、リンパ管疾患に対する医療サービスは不十分で、改善の必要があります。
医療体制、保険制度などとともに重要なのは、専門家の育成です。同領域にかかわる医師として最近資格が創設された「脈管専門医」がありますが、医師は急性期治療で精一杯の感があり、予防も重要で、かつADL低下が大きなQOL低下要因となっている脈管疾患では、看護師の参画が必須です。